2019年3月に卒業した藤村ゼミの7回目の卒業生の卒業研究発表会は1月28日に行われました。
今年度の当ゼミの卒業生は11名で全員無事発表することができました。卒研のタイトル(発表順)を以下に紹介します。
- 加速度センサを用いた仮想風鈴の共有サイトの実現(2名の共同)
- 簡単に記録できる健康管理カレンダーの実現
- 音声認識ドローイングツールの実現(2名の共同)
- 画像認識を用いた眼鏡のくもりを取るシステム
- 仮想風暖簾の制作とバーチャル体験に関する考察
- Fitbit APIを用いた照明による心拍の可視化(3名の共同)
- 温度を可視化する絵画フレームの制作
このうち、許可いただいた卒業制作作品(1番目の発表)のスライドと概要です。
【概要】本研究では、夏の風物詩となっている「風鈴祭り」をイメージとした、自然や時間の流れを感じられるメディアアートである。「風鈴祭り」は、毎年夏に全国各地で行われ、風鈴の澄んだ音色と、短冊が風に揺れる様子により涼しさを感じられる祭りである。遠隔地で行われるこのお祭りを、より身近に感じられる作品を制作したいと考えた。そこで、風鈴が目の前に無くても涼しさを感じることができる作品とすることを目指し、物理的に離れた風鈴の動きを読み取りネットワークを介して仮想空間上の3Dアート作品として表現することにした。これにより、そして、全国各地の「空間」に分散した風鈴の動きにより完成されたアート作品は、現実世界のしがらみを癒す、涼しげな空間を与えることができるものになった。
制作にあたり、micro:bitの加速度センサとJavaScriptの3DCGライブラリであるthree.jsの2つを利用した。micro:bitの加速度センサは、WebBluetoothを使ってWebブラウザで加速度センサーの値を取得することができる。これにより、風の動きを数値化した。three.jsは、三次元空間の表現が可能になるため、風鈴の3Dモデルを動かすことができる。こうして表現されたものを「仮想風鈴」と呼び、物理的に離れた多数の「仮想風鈴」を一つのWebページ上に表示可能にし、各地域の風を感じることができるアート作品となった。
作品に受け手が関与するインタラクティブなメディアアートの多くは、作品に鑑賞者が直接インタラクションをすることで作品が完成する仕組みである。しかし、今回の作品では鑑賞者自身ではなく遠隔地にある複数の「仮想風鈴」という媒体を通じて一つの作品を完成させている。これは、一つの表現方法として新しい取り組みである。これにより、風鈴を並べて眺めれば良いものをわざわざアート作品に組み込んでWeb上で風鈴を眺めるという取るに足りない発想を実現し、現代アートの小難しく近寄りがたい印象から親しみやすくすることができた。