AIに研究テーマ決めから論文執筆・査読まで任せてみた

by fujimura
AI研究
#自律研究エージェント#AIエージェント#Claude Code#Codex#論文

「研究」というと、テーマを決めて、実験をして、論文を書いて、ほかの研究者にチェック(査読)してもらう……という長い道のりです。最近は、その一部をAIに手伝ってもらうのは当たり前になってきました。では、最初から最後まで全部AIに任せたらどうなるでしょうか?

今回、AIに「何を研究するか」を決めるところから、実験、論文執筆、査読への対応までを、人間の手を借りずにやらせる実験をしてみました。

人間が渡したのは3つだけ

  • 研究分野:「コンピュータサイエンスの最近の技術を使って、社会問題の解決に役立つ研究」という、ざっくりした指定だけ
  • 使ってよい資源:初稿までの時間は12時間、使えるのはGPUのない普通のノートPCと、誰でも使える公開データだけ、といった条件
  • テーマの採点基準:社会へのインパクトや新しさなど7つの観点。特に「その分野の研究者がすぐに思いつくような問いほど低く評価する」という項目を入れて、ありきたりなテーマを避けるようにしました

AIはまず、ここ数年で使えるようになった技術と、ほかの分野の課題を組み合わせて、テーマの候補を12個以上挙げます。そこから採点基準で絞り込み、研究テーマを自分で決めます。

4体のAIでチームを組む

研究は、役割の違う4体のAIエージェントがチームを組んで進めます。

人間と4体のAIエージェント(研究管理・研究・テーマ批判・査読)のあいだのやりとりを示した図
  1. 研究管理エージェント:ほかのAIを起動したり、止まったときに再開させたり、査読結果を渡したりするまとめ役
  2. 研究エージェント:テーマ決めから実験、論文執筆、査読への対応までを担当する主役
  3. テーマ批判エージェント:研究エージェントが選んだテーマ候補に「本当にそれでいいの?」とツッコミを入れる役
  4. 査読エージェント:実験を自分でやり直して結果を確かめたうえで、論文をチェックする役

ツッコミ役と査読役には、研究エージェントとは別の種類のAIモデルを使いました。同じAI同士だと、見落としまで似てしまうかもしれないからです。また、専用のプログラムは書いておらず、文章で書いた指示書だけで、市販のAIコーディングツール(Claude Code や Codex)を動かしています。

結果:約3日間で5本の論文が完成

研究の途中、人間は研究の中身に一切口を出していません。その結果、2026年10月25日からの約3日間で5回の研究を続けてやりとげ、5本の論文ができあがりました。テーマは、衛星データを使った森林や湿地の調査、気温の予報、農作物の多様性など、どれも公開データを使った環境や社会に関わるものです。

  • 1本あたりにかかった時間は、平均で約14時間(待ち時間も含む)
  • AIサービスの月額料金を除くと、追加の費用は1本あたり約2ドル
  • 査読エージェントは、すべての論文の実験をやり直して数値が再現できることを確かめたうえで、修正を求めた
  • 別の2つのAIに評価させたところ、「ワークショップ(小規模な研究発表の場)に採択されるかどうか」くらいのレベルと判定された

査読での指摘の多くは、実験のミスではなく「結果をどう解釈するか」に関するものでした。修正の結果、5本中2本は、思いどおりの結果が出なかったことをそのまま正直に報告する論文になっています。

これらはAIが書き、AIだけがチェックした論文です。人間による査読は受けていません。

これから

5本すべてがレベルの高い論文というわけではありません。それでも、ほとんど費用をかけずに1本あたり約14時間で論文ができあがるのは、驚きの生産性です。

今回は、あえて過去の研究の経験を一切引き継がず、毎回ゼロから研究させました。そのため、似たような論文もできてしまいました(5本中4本が衛星データを使っています)。今後は、過去の経験から学んで改善していく仕組みを入れる予定です。

おもしろいのは、指示の書き方ひとつでAIの選ぶテーマが大きく変わることです。開発中、分野を「コンピュータサイエンス」とだけ書いていたときは、AIはキャッシュや文書検索といった、コンピュータそのものの技術ばかりをテーマに選んでいました。ところが「公開データを使って社会問題を発見・解決する研究」という1文に変えたところ、テーマ候補15個中14個が社会問題に関するものに変わりました。

人間の専門家は、自分の分野の外のことはあまり知りません。一方、AIは幅広い分野の知識を持っています。実際、今回の5回の研究で、AIは環境、防災、農業、健康、行政など9分野にわたる計77個のテーマ候補を自分で挙げていました。AIなら、人間が思いつかないような研究の問いを見つけられるかもしれません。

おわりに

プログラミングはすでにAIが担う時代になりましたが、論文を書くのもAIという時代が、もうすぐそこまで来ているのかもしれません。

AIに自由に研究させると、不適切な方法でデータを集めてしまうおそれもあります。今回の指示書では、プライバシーや人に関するデータの扱いについてルールを決めていますが、実際に行うときは十分な注意が必要です。

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