戦国時代のジェネラティブ・アート

先日のNHKの日曜美術館で、古美術鑑定家中島誠之助さんの案内で、「初花」と呼ばれる重要文化財の茶入れが紹介されていました。この茶入れは800年程前に中国から伝来し、室町幕府第8代将軍の足利義政が所持した後、戦国時代に信長、秀吉、家康に引き継がれた名品とのことです。この初花には窯で焼いたときにうわぐすりが溶け出して形成された「なだれ」と呼ぶ模様があります。初花はこのなだれが奇跡的に3つもあり、その一つが底に到達手前でギリギリとまっているところが最大の特徴です。中島さんは、窯の中という「人為の及ばぬ」ところで形成される模様、そこに天下人達が心をひかれたのでは、とのお話でした(2月24日20:00再放送予定)。

先日の記事で、乱数やノイズによって「思いがけない美」を制作するジェネラティブ・アートについて書きましたが、この初花は、このようなアートの原型といえないでしょうか。もっともジェネラティブ・アートには「人為の及ばぬ」というところを、乱数やノイズによって「人為的に」発生させているところが少し異なるかもしれませんが。Wikipediaによるとジェネラティブ・アートの初期の作品としてモーツァルトの “Musikalisches Würfelspiel”(音楽のさいころ遊び)1757年が知られており、こちらは、さいころで人為的に乱数を生成して作曲しているとのことです。

どこまでがジェネラティブ・アートと呼べるのか難しいところですが、ノイズを窯の炎といった自然界まで拡張解釈すると、そもそもイケメンや美女も遺伝子の組み合わせという乱数によって生まれているものですので、人もジェネラティブ・アートとなってしまうかもしれませんね。いずれにしてもジェネラティブ・アートには天下人でなくても心が惹かれます。